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孝行
秋田で初めてもつ煮込みを食べた。
東京で馴染みのある彼の味とは違う、初めて食べる味だった。
もつ煮と言って想起するのは醤油味のもつ煮込み。今口にしているのは味噌味のもつ煮込み。
醤油の甘みではなく、味噌の甘み。
素直に美味しい。
体感気温-6℃、風速10m/s、霧雨。
そんな天気の中、炭の匂いに誘われ、久しぶりに再開した父親と二件目のこの店に入った。
昭和然とした内装に、急な階段。沢山の徳利、今にも落ちそうなくらい神様の乗った小さな神棚に、脚の装飾の凝った手作りの熱燗製造機。
店主のお爺さんが、
「子供がごんなになっだん︎︎ ︎︎゚わ゚た゚ぢも歳をと゚っだど。」「子供どさげがのべるの゚ん゙ば幸せん゚なごど」
と三遍同じことを言い、
「ん︎︎ ︎︎゚わ゚も80」「土金」
あとは聞き取れなかった。続けて、
「げござゃなぐで」
うん分からん。
秋田の方言は今一分からない。
恐らく、「自分も幾つになったか知らんが、子供がこんなに大きくなったのだから、歳をとったのだろう。子供と酒が飲めるのは親の喜びだ。あんちゃんもゲコでなくて孝行だね。」的なことを言っているように感じた。
このもつ煮が美味い。
この地酒が旨い。
そう感じ、唯現に在るということ。
それだけを肯定し得る。
これが。
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